はじめに:GLP-1ダイエットが急拡大。だが「中止後のリバウンド」が大きな社会問題に
近年、日本では美容クリニック・オンライン診療を中心に
GLP-1作動薬(セマグルチド・チルゼパチド)を用いた“GLP-1ダイエット”が広がっています。
しかし、厚生労働省および日本医師会は適応外使用に対し注意喚起を行い、
特に美容目的の使用や広告の過剰表現に対して監視を強化 しています。
公的資料
- 厚生労働省:GLP-1/GIP-GLP-1受容体作動薬の適正使用に関する通知
https://www.mhlw.go.jp/content/
10601000/001555633.pdf - 日本医師会:GLP-1受容体作動薬の美容目的使用に関する警鐘
https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20231025_4.pdf
これら公的資料でも明記されているように、GLP-1の「美容目的使用」は医療的リスクと社会的議論が深まりつつある領域です。
しかし、その一方でほとんど注目されていない問題があります。
日本には「GLP-1ダイエット利用者数」の公的統計が存在しない
厚労省・学会・PMDAはGLP-1の適正使用を指導していますが、自費診療としてGLP-1を使用している人数の公式データは存在していません。
一方で保険適用薬の試算から、市場の巨大さは推測できます。
参考:中医協資料(市場規模)
- ゼップバウンド(チルゼパチド)ピーク時利用想定:13万人・市場規模319億円
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=76365 - ウゴービ(セマグルチド)市場規模:約328億円(推計)
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=76206
つまり、保険適用だけで 数十万例規模 のポテンシャルがあります。
ここに自由診療ユーザーが上乗せされれば、実際の利用者は数十万人〜数百万人規模 と推定できます。
真の問題:GLP-1を中止すると “ほとんどの人がリバウンドする”
強力に痩せるGLP-1ですが、中止後のリバウンド率が非常に高い ことはあまり知られていません。
これが世界的に議論されている「最大の課題」です。
① セマグルチド(STEP1 延長試験): 中止後、減った体重の約2/3を再増加
論文(オープンアクセス)
Wilding JPH et al. “Weight regain and cardiometabolic effects after withdrawal of semaglutide.”
Diabetes Obes Metab. 2022
PDF:https://discovery.ucl.ac.uk/id/eprint/
10149199/1/Diabetes%20Obesity%20
Metabolism%20-%202022%20-%20
Wilding%20-%20Weight%20
regain%20and%20cardiometabolic%20
effects%20after%20withdrawal%20
of%20semaglutide%20.pdf
主な結果
- 68週間の減量:-17.3%
- 中止後1年で:減量の約3分の2を再増加
- 120週時点の純減:-5.6%まで後退
著者は「中止後、減量の大部分が失われた」と結論しています。
② チルゼパチド(SURMOUNT-4):中止群の82%がリバウンド
論文
Continued Treatment With Tirzepatide for Maintenance of Weight Reduction in Adults With Obesity: The SURMOUNT-4 Randomized Clinical Trial
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/
38078870/
主な結果
- 初期36週の減量:約-21%
- 継続群:さらに-5.5%
- 中止群:+14%の再増加
③ メタ解析:中止後平均 +5.6 kg のリバウンド
論文
Quarenghi M et al., “Discontinuation of GLP-1 RAs and metabolic outcomes.”
J Clin Med. 2024(MDPI)
https://www.mdpi.com/2077-0383/14/11/3791
GLP-1中止後、平均 +5.6 kg の体重増加を認めたと報告。
海外メディアではどのような反響があるか?
- People who stop using Mounjaro suffer reversal of health benefits, says study — The Guardian(Nov 24, 2025)
→ 体重だけでなく血圧・コレステロールなどの改善効果も中止後に逆転すると報じています。 - People who stop weight loss drugs return to original weight within year — The Guardian(May 14, 2025)
→ semaglutide / tirzepatide 等を中止すると1年以内に体重が元に戻る傾向があると分析結果を紹介しています。 - How weight-loss wonder drugs are redefining the way our ... — The Guardian(May 17, 2025)
→ semaglutide 中止後の急速なリバウンドについて解説しています。 - Mounjaro(tirzepatide)を中止した人の多くは体重を取り戻しやすい
→ SURMOUNT-4 試験の事後解析によれば、中止後1年で82%が初期の減量の25%以上をリバウンドしたことが報じられています(JAMA Internal Medicine ベースの報道)。 - semaglutide / tirzepatide 中止後の体重再増加は一般的な現象
→ いくつかの臨床解析および報道が、体重減少の大部分(50〜70%以上)が薬剤中止後に戻るという傾向を示しています。
📎ニュースリンク
🔗 People who stop using Mounjaro suffer reversal of health benefits, says study — The Guardian
https://www.theguardian.com/society/
2025/nov/24/mounjaro-health-benefits-
reversed-regain-weight-after-stop-using
🔗 People who stop weight loss drugs return to original weight within year
https://www.theguardian.com/society/
2025/may/14/people-who-stop-weight-
loss-drugs-return-to-original-weight-
within-year-analysis-finds
結論:
GLP-1は“痩せる薬”であって、“痩せ続ける身体”は作れない。
これが、現在の医療の大きなギャップです。
そこで私が提唱する概念:
“アフターGLP-1層”という新しい患者カテゴリー
「アフターGLP-1層」とは:
- GLP-1治療の止め時がわからない
- GLP-1で痩せたが、維持する自信がない
- GLP-1で瘦せたが、すぐリバウンドした
つまり、
GLP-1治療で一度痩せたが、減量維持が難しい、出口戦略がない人々
を指します。
この層は今後、日本で急増します。
急増する理由
1. GLP-1ダイエットが急速に普及
2. 中止後のリバウンド率が極めて高い
3. 自費診療の薬代が高額で継続が難しい
4. 国が美容目的使用の規制を強化
5. “長期継続できない治療”が本質的に抱える構造問題
だから私は、「アフターGLP-1」という言葉を社会に広め、市場を可視化することを提唱しています。
アフターGLP-1層の解決策:
内視鏡減量治療(ESG / MEGA / GMA / BT)が最も適している理由
GLP-1は“代謝シグナルの薬物療法”。
一方、内視鏡治療は “胃の構造そのものを変える治療” です。
① 胃容量を物理的に減らす(ESG・MEGA)
→ 食事量が自然に減る
→ GLP-1中止後の強い空腹感を抑制
② 胃排出を遅らせる(GMA / BT)
→ GLP-1と同様の「満腹持続効果」
→ ホルモン作用を“胃そのもの”で再現
③ 行動療法が成功しやすい
→ 胃の容量制限があるため、本人の少しの努力で食事量コントロールが成立
④ 長期維持データが豊富
→ 内視鏡治療は5年以上の維持報告が複数存在
(例:Endoscopic Sleeve Gastroplasty 長期成績)
※ ESGの5年成績の論文
• Five-Year Outcomes of Endoscopic Sleeve Gastroplasty for the Treatment of Obesity
著者:Reem Z. Sharaiha ほか
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33011292/
つまり…
アフターGLP-1の“出口戦略”は内視鏡治療である
GLP-1で得た減量成果を、“薬をやめた後も維持できる身体”に変換する技術こそ、内視鏡治療の本質です。
当院は、日本で最もアフターGLP-1層を救えるクリニックへ
当院(東京たかはしクリニック練馬院)は、ESG・MEGA・GMA・BT など国内トップレベルの内視鏡減量治療件数と実績を有します。
だからこそ、
「GLP-1をやめた後どうすればいいのか分からない」
という患者さんに、構造的解決を提供できる唯一の存在
であると自負しています。
最後に:痩せる時代から、“痩せ続ける時代”へ
GLP-1ダイエットの普及により、日本人は“痩せる”経験を手に入れました。
しかし本当に必要なのは、
薬をやめた後の人生をどうデザインするか
です。
その答えが 内視鏡減量治療であり、
その対象こそ アフターGLP-1層です。







